「出資金額」欄記載の金員を出資した。
被告Aの財務状況の概要等 ア被告Aは,いわゆるバブル経済の崩壊に伴い,多額の不良債権を抱えつ つも,平成10年度(信金法上,信用金庫の事業年度は4月1日から翌年 3月31日までとされている。)までは黒字決算を維持していたが,平成 11,12年度と2期連続して赤字決算を行った。
(以下略) イ・・・(前略),被告Aは,平成11年10月1日から平成12年3月 31日までの間及び同年12月1日から平成13年3月31日までの間 に,それぞれ出資金の推進運動を行った(以下,「出資金増強運動」とい い,平成11年度中の出資金増強運動を「第1次出資金増強運動」,平成 12年度中の出資金増強運動を「第2次出資金増強運動」という。)ため, 平成12年3月31日時点における出資金総額は前年比2億6700万円 増であり,平成13年3月31日時点における出資金総額は前年比4億4 400万円増であった。
被告Aに対する金融検査
ア金融検査マニュアル
金融機関は,自ら資産の査定基準を定めて,その有する資産を検討・分 析して,貸出金債権の回収の危険性や価値の毀損の危険性を分類区分する 自己査定(具体的には,債務者の返済能力等に応じて債務者を5つに区分 した〔以下「債務者区分」という。〕上で,担保及び保証の有無等を勘案 し,回収の危険性に応じて貸出金債権を4つに分類し〔以下「資産の分類」 という。〕,各債権につき貸倒引当金・貸出金償却の額を算出する。)を行 う必要があり,これに対し,監督当局は,金融機関による自己査定の適切 性等を検証すべく,銀行法25条等に基づいて,金融機関に対する金融検 査を実施することとなるところ,金融庁は,平成11年7月1日付けで, 金融検査の基本的考え方及び検査に際しての具体的着眼点等を整理した通 達である「金融検査マニュアル(預金等受入金融機関に係る検査マニュア ル)」(以下「金融検査マニュアル」という。)を策定・公表した。
イ日銀考査
日本銀行は,平成11年10月,被告Aに対し,同年9月30日を検査 基準日とする考査を実施した(以下「日銀考査」という。)。
被告Aが平成11年3月31日時点において自ら算出した自己資本比率 は4.72パーセントであったが,被告Aが,日銀考査の結果を踏まえ, 同年9月30日時点における自己資本比率を算出し直したところ,自己資 本比率は2.38パーセントであった。
ウ平成12年検査
関東財務局長は,平成12年6月,被告Aに対し,同年3月31日を検 査基準日とする金融検査を実施した(以下「平成12年検査」という。
損害金請求
争点(5)(被控訴人の損害金請求が権利の濫用にあたるか)について 控訴人は,同人が支払を怠って期限の利益を喪失した場合,被控訴人が控訴人に対して請求できるのは,残元本と経過利息及びこれらに対する日割りの損害金だけであることと,控訴人は誠実に債務を履行したことを指摘し,被控訴人の損害金請求は権利の濫用であると主張する。 しかしながら,控訴人が支払を怠って期限の利益を喪失した場合も,前記のとおり控訴人の債務(返済)内容は固定化されているのであるから,本件と同様の損害金を請求できると解されるし(甲3,乙20,弁論の全趣旨),控訴人が残元金と経過利息について期限前返済をしただけではその債務を誠実に履行したとはいえない。 控訴人は,本件契約上又は銀行取引約定上,期限の利益喪失の場合には,将来利息に係る損害金の請求はしない趣旨であると主張するが,これを認めるに足りる証拠はなく,その他,本件全証拠によっても,被控訴人の損害金請求が権利の濫用であると認めることはできない。 したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
被告Aが平成12年3月31日時点において自ら算出した自己資本比率 は4.76パーセントであったが,被告Aが,平成12年検査の結果を踏 まえ,再度,平成12年3月31日時点における自己資本比率を算出し直 したところ,自己資本比率は2.86パーセントであった。
エ平成13年検査
関東財務局長は,平成13年12月から平成14年1月にかけて,被告 Aに対し,平成13年3月31日を検査基準日とする金融検査を実施した (以下「平成13年検査」という。)。
被告Aが平成13年3月31日時点において自ら算出した自己資本比率 は4.46パーセントであったが,被告Aが,平成13年検査の結果を踏 まえ,同年12月31日時点における自己資本比率を算出し直したところ, 自己資本比率は▲2.11パーセントであった。
被告Aの破綻
被告Aは,平成14年1月25日,金融庁長官に対し,破綻申請を行い, 同長官は,同日,被告Aに対し,預金保険法74条に基づく管理を命ずる処 分をした。
被告Aは,平成14年6月17日,E信用金庫に事業を譲渡し,これによ り管理を命ずる処分が取り消され,被告Aは解散した。
2 本件における主要な争点
被告理事ら及び被告Aの責任
ア被告A職員の説明義務違反の有無(争点1)
イ被告A職員の優越的地位の濫用の有無(争点2)
ウ被告A職員の出資金払戻協力義務違反の有無(争点3)
エ被告理事らの指導監督義務違反の有無(争点4)
オ被告理事らの行為と原告らの損害との間の因果関係(争点5)
被告国の責任
ア被告国の被告Aに対する監督権限不行使の違法性(争点6)
イ平成13年検査の違法性(争点7)
第3 争点に関する当事者の主張
(原告らの主張)
1 争点1(被告A職員の説明義務違反の有無)について
主張の要旨
被告A職員は,原告らに対する出資の勧誘に際し,出資の基本的性格及び リスクに関する説明義務を怠り,また,被告Aの経営状況が悪化し,破綻す る具体的な危険性があったにもかかわらず,被告Aの経営状況に関する説明 義務を怠ったことにより,原告らに出資金相当額の損害を与えた。
被告A職員の上記説明義務違反は,不法行為に該当し,これは被告Aの事 業の執行につきなされたものであるから,被告Aは,原告らに対し,民法7 15条1項に基づく損害賠償責任を負う。
出資の基本的性格及びリスクに関する説明義務違反
ア出資金は,預金と異なり,元本割れのおそれがあるほか,出資を受けた 会社が破綻した場合には無価値となるリスクを有している。
預金について は,いわゆるペイオフ解禁に際しても,1000万円までは保護されてい るのに対し,出資金は保護の対象となっておらず,従前は,信用金庫の出 資金についても,信用金庫相互援助資金制度(以下「相互援助資金制度」 という)により全額が保護。
されていたが,平成10年10月に同制度の 改正がなされ,平成13年4月1日からは1万円を超えては出資金を保護 せず,平成14年4月1日からは一切出資金を保護しない旨改められるこ ととなった。
また,出資金は,預金と異なり,譲受けを希望する会員又は会員たる資 格を有する者に譲渡するか,被告Aに譲受請求をしない限り,払い戻すこ とができず,投下資本の回収に長期間を要するというリスクを有している。
このように,出資金と預金とは相当程度性質が異なるものであるが,信 用金庫は地域住民から預金を受け入れることを主な業務とする金融機関で あるため,信用金庫の職員が出資を勧誘する場合,預金の勧誘と誤認され るおそれがある。
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